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炭水化物の有無 犬に野菜・米・豆類 を多量に使う手作り食に関するご質問が多いので統合獣医療的な意見をまとめてみました。 以前「野菜の有無」でも話しました様に、消化できる子達の生食や手作り食に、1日の摂取量の5~10%程度(全体量の計算に加えない方が良い)の野菜・米・豆類を与える事に関しては問題ないと思います。 疑問視されるのは、食事の全体量に占める野菜・米・豆の量が過剰すぎる点と、それに伴う重要な動物性栄養素の不足です。 勿論、個体差がありますので、全ての情報の見解はご家族が行うことになります。 個体によっては、米や豆に含まれる糖質の過剰摂取は良くない? 答え:YES 昔からお米を食べる日本人と暮らして来た犬達の中には、澱粉分解用のαアミラーゼ(Amy2b)遺伝数が狼より多い子もいるだろうとは思います。 しかし狼と同じαアミラーゼ遺伝子数(2個)しかない犬も居るという事も研究で判明していますので、そういう子達に過剰な糖質を摂取させるのは良くないです。 理由 ▶︎肉食動物の膵臓で分泌されるαアミラーゼは、食べる筋肉や肝臓に多く含まれるグリコーゲンを分解する役割があるゆえ、更にαアミラーゼを必要とする澱粉を大量に与えることで膵臓に過剰な負担が掛かる ▶︎摂取糖質で血糖値が上昇し、それを下げるため膵臓から追加分泌インスリンが出るが、インスリンを追加で分泌する事を得意としない肉食動物の膵臓にとっては負担となる ▶︎高血糖そのものもが、膵臓のインスリン分泌細胞(β細胞)を傷つけ、インスリン分泌能力を更に低下させ様々な身体的障害が起こり易くなる ▶︎過剰糖分摂取は、過剰薬物投与と並び、胆嚢疾患や胃腸障害、脂肪肝などの大きな原因 ▶︎野菜・米・豆類の多量摂食で、身体の修復材料であるな動物性タンパク質や脂肪の摂取が疎かとなる ▶︎血糖値スパイクで酸化ストレス増加や炎症反応を増加させ血管を傷つける膵臓や胆嚢問題、脂肪肝の原因は「脂肪」という専門家が多く、治療に低脂肪食を 勧める様です。”膵炎は食する脂肪が原因”という話は、全くの間違いではないですが、「脂肪」には良質と悪質がある違いを明記しないのであれば知識がない 判断になります。 ドライフードに含まれている様なトランス脂肪酸で膵臓に疲れが出るのは確かです。しかし、良質な動物性脂肪で膵炎を起こす事はまずないです。 人の医学でも、糖質過剰症候群をケトジェニックダイエットで治療する医者も多い中、特に肉食動物達には過剰な糖質摂取(+動物性栄養素不足)は健康にはよくないと言えます。 糖質摂取はエネルギー供給に必要なのか? 答え:NO 理由 ▶︎体内で必要なブドウ糖は、肝臓で、アミノ酸、乳酸、グリセロールなどから作られ(糖新生)為、タンパク質や脂質を食べていれば十分な量が確保できる。脂肪酸は、体内では糖に変換出来ないが、脂肪酸のエネルギーは糖新生に利用される。 ▶︎赤血球(ミトコンドリアがいないのでブドウ糖だけ)以外の全ての細胞(脳も含め)は、脂肪分解で発生する「ケトン体」をエネルギー源として利用でき、肉食動物はケトン体によるエネルギー生産を得意とする。 腸内で短鎖脂肪酸を生産させるには食物繊維が必要なのか? 答え:NO 理由 ▶︎食物繊維や多糖類から短鎖脂肪酸が産生されるという人を対象にしたお話を、そのまま犬に適用させて「野菜を与えましょう」というサイトが多いが、犬猫は人じゃない ▶︎肉食動物は動物性たんぱく質繊維から短鎖脂肪酸を作れる腸内微生物が存在し、バランスの取れた生食メニューであれば敢えて(発酵)野菜を与える必要はない ▶︎オランダの大学の研究結果で短鎖脂肪酸の生産率が高かった動物性食材 1:牛コラーゲン 2:カゼイン 3:グルコサミン 4:鶏の軟骨 5:グルコサミン~コンドロイチン混合物 6:うさぎの骨 上記は偶々使われた物だが、他にもまだ有効な食材はもっとある 野菜から微量栄養要素を摂取しなくてはならない? 答え:NO ▶︎生の内臓に微量栄養素は十分含まれており、動物性の方が肉食動物には消化吸収しやすい形。 ▶︎補うのであれば、量が増さない消化し易いサプリで補う事も出来る ▶︎野菜を消化できる子にも、おやつ程度にする方が良い。大量摂取させ動物性栄養素が足りなくなる方が体への悪影響が出易い ▶︎犬猫には、食物繊維を分解できる菌の数が少ないため、過剰摂取は腸に負担をかける ▶︎植物性食材の過剰摂取で胃酸phが上昇し、タンパク分解酵素のペプシンが働かず、殺菌効果も減少する ▶︎野菜や豆類の過剰摂取で胃拡張や胃捻転を起こすリスクも高くなる 結論 食事のメニューを決める際に重要なのは 「我が子の身体にこの食事は適しているのか?」 という事です。 私達が推薦する生食にしても、長年の疾病歴から生を消化できない子もいます。そういった子には、缶詰や質の良いフードの方が、その子の身体には合っている事もあります。 皆んながやっているから、専門家が勧めるから、という理由だけでは、我が子の身体が伝えるメッセージを見逃しがちになりますので、「不安だから右倣え」ではなく、意識を高めで我が子と相談し、厳選して決めるメニューであるべきです。 生食されいる方々は、栄養学の知識がない専門家との会話に苦労される様ですが、世界中に存在する知識と、選択への自信があればきっと議論に勝てます。 |
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