バイオメンター動物病院
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去勢のお話


上 の写真は約五ヶ月齢になる頃の逞と成犬の北斗です。ちょうどこの頃、乳歯から永久歯に生え変わる時期でした。そして最後の乳歯が抜けたと思ったその次の日 の散歩から、散歩中に足を上 げてマーキングする行動が初めて現れました。6ヶ月齢で最後の乳歯が抜けマーキング開始とは(偶然でしょうが)驚くほどのタイミングです。乳歯から永久歯 へ、座った排尿か ら足を上げての排尿、性ホルモンの発達の影響とみられるマーキング行為、全て身体の成長に関係していますね。
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マーキングは縄張り主張であり、より高い場所に排尿することで別の犬達に自分は大きくて強い犬なんだという事を警告するためでもあります。また男性ホルモ ンであるテストステロンをメスの鼻に近い場所に残すことで存在をアピールする為でもあるそうです。98%の雄犬が足を上げてマーキングをする事実からも、 この行為が性ホルモンの影響で始まる本能的行動だと言えます。
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性ホルモンは分泌初期には成長ホルモンの分泌を促進し骨を伸ばす手助けをしてくれますので、この時期に体高の伸びが急激に増える傾向にあります。またその 反面、性ホルモンのエストロゲンやテストステロンには骨の成熟を促進し骨端線を閉鎖する役目もありますので時間と共に高さへの成長が止まり始めますが、筋 肉や骨、関節や腱、靭帯などを強化していくのに重要な役割を果たしてくれます。そういった性ホルモンの大事な役割を考慮し私達の診療所では去勢を希望する 飼い主さんに対して(問題行動が伴っていなければ)2年は待つようにアドバイス します。雌犬に関しても大体同じ位です。(2回目と3回目のヒートの間までは延期する)

アメリカや日本では、早め早めの去勢を促す獣医もいると聞きまし た。性ホルモンが発達する前(生後六ヶ月前後)にすでに去勢してしまうことに(室内犬の足上げ排尿を予防できるかも?メスの存在を知らないうちに去勢して 興奮しないようにさせれるかも?)少なかりの利点もあるのでしょうが、犬達の身体や精神の成長を考えた限り私達の意見としては欠点の方が多いです。
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早すぎる去勢で起こり得る事は、骨端線閉鎖が促されず体高だけが伸び続けるわりには筋肉や骨、関節や腱、靭帯などの強化が追いつかない。その結果、骨は伸 びているが細いままで骨折しやすくなったり、関節や筋肉の発達がなく怪我をしやすい身体に成長してしまうと言われてます。また甲状腺機能低下症、尿失禁、 肥満などになる確率も上がるという話もありました。勿論、こういった事は日頃の健康管理により予防できる事でもあるのですが、この性ホルモンの影響力を考 慮し去勢をすると決めた場合は身体が成長しきってしまうのを待つようオランダではアドバイスする獣医が殆どです。
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また最近の研究では、去勢と副腎機能低下の関連も明らかになってきてます。これは去勢で性ホルモン分泌を失った身体が、どうしても身体にとって必要である 性ホルモンを副腎に代行分泌させるという事です。年齢的にまだまだ若いにも関わら、またハッキリした原因も見つからないが以前より疲れやすい、異常な睡眠 時間が必要、食欲がない、免疫力が落ちた、元気がない等の症状が現れるケースで副腎機能低下が考えられると言われてます。こういった症状にステロイドで治 療を行う獣医が多いと思いますが、私達は性ホルモンと副腎機能の関連も考慮しながら薬に頼らない治療を行ってます。
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因みに、オランダでは問題行動が伴わない場合は去勢しない飼い主さんが多いです。私達は、北斗が2歳半になった時に去勢しました。理由は、雌達が発情期の 際に、対面する大型犬の雄達に襲いかかる行為が続いたからです。去勢後はそういった発情期に関係する攻撃行動は全くなくなりましたし、心なしか北斗のスト レスも減った様な気がします。


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