バイオメンター動物病院
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コレステロールの嘘と本当


コレステロールと中性脂肪の数値に関する相談を受けました。オランダの血液検査の結果項目にもコレステロールも中性脂肪も載ってはいますが、オランダ人獣 医師の間ではこの数値を問題視する人は殆どいないという獣医である主人の話です。

中性脂肪は体が活動する上で必要なエネルギー源となり、肝臓で合成され血中や内臓、皮下など全身に「脂肪細胞」として蓄えられます。行動する際にこの脂肪 を燃やして体は動く事ができます。また内臓や骨などを衝撃から守る役目も担ってます。野生で行動する動物にとっては冬場は大変重要なものです。

コレステロールの代表的な役割は、脳の機能を保護する(体内コレステロールのうち約4分の1が脳に集中)、体の細胞膜を作り修復する(細胞作りにコレステ ロールは必須)、ホルモン合成に不可欠(女性ホルモン、男性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)、脂肪の消化に必要な胆汁酸の産生、ビタミンD前駆体の原 料、記憶の形成に関わり神経機能に必要、etc..です。

注意するのは検査結果上の「総コレステロール」です。この「総」では何の数値なのか不明だというのを覚えておいてください。コレステロールはLDL(低比 重リポ蛋白)とHDL(高比重リポ蛋白)の二種類の微粒子に分けられ、LDLが一般的に悪玉と言われます。またこのLDLも、脂質組成により更に細かい小 型の粒子(Small dense LDL)と大型の粒子(Large buoyant LDL)に分かれます。粒子径が小さいほど、傷ついた血管壁に入り込み酸化されやすいという研究結果により、酸化Small dense LDLが真の悪玉ということになります。人の場合、LDL内の小型の粒子(Small dense LDL)の数値が高かったり(中性脂肪値が高かったり)、善玉HDLと総コレステロールの比率値が低かったり(理想は25%以上)することで初めて冠動脈 疾患の発症率が上昇すると言えるそうです。ですから「総コレステロール値」では良し悪しの判断は無理です。

アメリカのホリスティック獣医のDr. Beckerによると、犬や猫の体には善玉であるHDLコレステロールが多いそうです。また肉食である犬や猫の体は脂肪をうまく処理するように作られてお り、余 分なコレステロールを体内へ排出する機能に優れ、生食中にある脂肪から高脂血症や動脈硬化を発症せることはないと言ってます。また犬や猫の寿命 では動脈硬化などを発症させる時間はないという別の獣医もいます。これらの情報から、オランダ人獣医師たちがコレステロールや中性脂肪値を重視しない理由 が伺えます。ちなみにオランダでの犬猫の総コレステロールの標準値の上限は386mg/dlで、日本よりも幅をもたせてます。これを超えていても大きな問 題にする獣医は少ないです。

さらに中性脂肪の血液検査をする場合、最低でも12時間の断食後でない限り数値への信頼性は得られないとJ.D. Thomason獣医師が警告してます。この数値が食べたものに影響し血液中の濃度が上がるためです。アメリカの犬の中性脂肪標準値の上限は 291mg/dlで日本の二倍以上。Thomason獣医師は、犬の中性脂肪は500mg/dlまでは正常値と言えると述べてます。

アメリカの大学の人での研究は、高脂肪な食事では血中の脂肪濃度は増加せず、高炭水化物の食事が原因であるという研究結果がでており、「飽和脂肪酸に富む 動物性脂肪が血清コレステロール値を上げ心疾患の危険因子となっている」と考える根拠は崩壊したと言ってます。高炭水化物を取っている生食派は少ないと思 いますが、人の場合でも気になる血中脂肪は、摂取する炭水化物と関係していることを再勉強する必要があるようですよね。

中性脂肪と総コレステロールの数値が上昇した時点で、甲状腺機能低下を疑われる動物も多いようです。しかし脂肪を上手く処理できる肉食動物達の中性脂肪と 総コレステロール値が(それも日本の)標準値よりも少し高くなったことで、甲状腺機能低下を予告するのは、少々早まった診断ではないかというのが私たちの 意見です。もちろん、用心する気持ちはわかりますが、本当にそれと関連しているのか?それとも大袈裟な診断なのか?その辺りの違いを家族としても認識でき るよう知識を身に付け、専門家と一緒に考える姿勢が大事です。指摘を受けた時点で炭水化物の多い食事を与えているのであれば、生食に切り替えることで予防 できることは(他にも)沢山あるのは事実です。炭水化物が悪いのではなく、炭水化物を処理する体の機能が其々違うので、巷で雑食と言われる犬の中にも高炭 水化物から様々な疾病を発症する子もいるということです。

余談ですが、日本のコレステロール基準値は欧米に比べ厳しすぎると東海大学名誉教授の大櫛陽一氏が述べてます。標準値を厳しくすることで「異常」である人 の数が増え、その結果、日本でのコレステロール低下薬の市場規模は3000億円超に膨らんでいるそうです。コレステロール降下剤、特にスタチン製剤は肝臓 でコレステロールの合成をおこなう酵素を阻害しますので、様々な副作用があることが分かるかと思います。またコレステロール値が低すぎると、ガン、記憶障 害、パーキンソン病、ホルモン異常、脳卒中などのリスクが増加するそうなので、私たちの体の為にも正しい知識を身につける必要がありますね。。


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