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エピジェネティクスの動物への影響 エピジェネティクスのお話は動物のブリーダー達にとっては大変重要な課題ですし、動物達と暮らす私達にとっても意識しておく必要がある内容です。 エピジェネティクスとは、DANの一部として存在する遺伝子の中から使われる情報が、生活環境の影響で変化する事を言い、いわば親から受け継いだDNAの 塩基配列を変えることなく、遺伝子のはたらきや使う遺伝子を決める仕組みです。 タンパク質によってDNA、細胞、臓器や筋肉、毛や爪、ホルモンや酵素、神経伝達物質や免疫物質などが作られ、古いものは分解排泄され、摂取した新しいタ ンパク質などで再生する話をしました。 遺伝子が持つ遺伝情報により、上記した様々な生体機能を持つタンパク質を作るまでの過程を「遺伝子発現」と言いますが、遺伝子を設計図とすると、タンパク 質はその設計図によって、その部分で必要な形に作られる「材料」や「道具」という訳です。 正しい時期に正しい場所で、正しいタンパク質が作られることで体は成り立って(健康を維持して)います。 どの遺伝子情報を元に、どのアミノ酸が、どの順番に並んでタンパク質を作るのか?で、タンパク質の機能がきまり、その設計図である遺伝子の情報をどれにす るのか?という部分で、生活環境から受ける影響により個体差が出るのがエピジェネティクスです。 その環境とは、食事や生活習慣、ストレス度や化学薬品への暴露量のことであり、この違いから、例えば同じDNA(遺伝子)を持つ個体の間にも健康面での違 いが生まれてくるという訳です。 もっと解り易い例をあげると、
となります。 一卵性双生児やクローンでも生活環境が変わることで、その後の健康状態や行動、心理的な面での違いが現れのもエピジェネティクスの影響です。 また同じ環境で生活し同じ様な食事をしていても、性格の違い、認知行動の違いでストレス耐性度に個体差が生まれ、それによる免疫系への影響がおこり、同時 に身体的な影響となって現れます。 薬品に対する耐性度も同じです。一方は、健康な生活をすることで解毒力があり副作用にも敏感でない子もいれば、不健康な環境に置かれた為に少しの薬品にも 過剰に反応する子もいます。 また食事面でも、同腹の子達の間でも、引き取られた後に食する食事内容により、免疫力などに違いが生じてきますし、同じように駆虫薬を行なっていたとして も、食事内容の違いで副作用が出る出ないの相違が起こります。 極端な例を出すと!
では、同じDNA、遺伝子を持っていたとしても、その子達の健康状態に大きな差が現れるのは理解し易い例だと思います。 ブリーディングへのエ ピジェネティクスの影響 ブリードを行う場合でも、親達の現 在の食事習慣だけでなく、過去の食事習慣、さらには今回親となる子達が生まれる前の胎児の段階の両親の食事習慣が、今後使われる遺伝子情報を変化させ、今 回親となる子達がエピジェネティックスで得たその遺伝子が、これから生まれてくる子犬にまで遺伝するということになります。 『ポッ テンジャーの猫(ローフード動物実験)』でもアグーチマウスを使ったランディ・ジャートル博士の実験でも、エピ ジェネティクスの影響により作動した遺伝子が、世代を通して子孫に大きな変化を持たらすことを証明する結果が出ています。 オランダの生食トレンドは既に20~30年になりますが、最近は「ブリーダーに勧められたから」ということで、子犬を連れて 生食スタートのための相談や、生食を買いに来られる方々が増えている事実から生食を採用しているブリーダーが徐々に増加している様子を伺えま す。 また生食と同時に、6週目からワクチン接種をさせるのではなく、母親から貰った移行、抗体検査を取り入れるブリーダーも増えているのも事実です。そのお陰 で、まだ幼い6、7週齢の幼い子達がワクチンの副作用で悩むケースが減ってきてます。 こういった事も、エピジェネティクスの一環として、今後の子犬や子猫達の生活で使われる遺伝子のスイッチに影響し、皮膚病や胃腸障害、腫瘍やその他の臓器 障害、また癲癇や内分泌障害を防ぐ鍵となる訳です。 家庭でのエピジェネティクスの影響 生まれた子を引き取り、育てる私た ちのような家族際にも、我が子達が親動物達から貰った遺伝子を刺激し、「健康になれる部分の遺伝子情報」を引き出してあげる事を可能にしたのがエピジェネ ティックスです。 日本では、ショップから動物を引き取るというケースが多い様ですが、その子の親達がどんな環境で過ごしていたのか不明な事が多いかと思います。 また子犬や子猫たちも、ショップに辿り着くまでに、どんな環境ですごし、どんな食事さをさせられていたのかさえも、情報として得る事ができない状況ばかり だと察します。 さらに、引き取る際に既に病気を発症している子も多いのが日本での現状だというのも事実です。 だとしても、引き取ったその日から、健康たとなれる遺伝子スイッチをオンにできる方法で育て、ケアを行う事で、数多くある遺伝子の中から健康体となれる遺 伝子を引き出する事が可能です。 その為には、なんども言う様に、動物の生体にあった食事を与え、人の介入による化学薬品のダメージ減らし、動物にあった行動心理を理解した対応をおこな い、必要な運動を行わせストレスを減らしてあげる生活環境作りることが重要になってきます。 また、獣医が勧めることを鵜呑みにするのではなく、自分で意識を高め、正しい情報を収集し、我が子の周りで起こることは家族が決定するかんきょうつくりを 行うことも、正しい形でエピジェネティクスが起こるための大事な要素となります。 エピジェネティクス関連の事例や研究結果 人の研究でも、ライフスタイル、食生活、社会的変化、環境汚染、また心理的な変化によっても使う遺伝子に変化が起こり、疾病発症率の高い遺伝子を持ってい ても健康体でいられたり、逆に癌遺伝子を持っていなかったとしてもがん疾患となる要因となることも明らかになっています。これがエピジェネティクスです。 遺伝子は決められた運命には違いないかもしれませんが、その動物達が持つ運命を、育てる私達が変えることが出来ることを証明してくれる研究結果です。 ◆ポッテンジャーの猫(ローフード動物実験) 私達にとっては当たり前の結果ですが、生食(生であるだけでなく、アミノ酸や微量栄養素、脂肪の重要性にもつながる)が肉食動物の繁殖や健康状態、さらに は行動にも好影響を与えることを証明してくれたのは大変ありがたいことです。 ◆ラ ンディ・ジャートル博士のアグーチマウス実験 母 親(妊婦)の栄養状態が子供の健康状態に影響する事は昔からわかっていたが、その因果関係まではわからなかった。だがここへきてはじめて、母親に栄養を補 給する事により、子供の遺伝子そのものを変えることなく発現の仕方を恒久的に変えられる事が証明できた。Dr Randy Jirtle of Duke University 妊娠中の太ったマウスに一方は栄養素が不足する普通食を与え、もう一方のグループにはビタミンなどのサプリを加えた実験である。 栄養素が不十分得たグループの肥満体の母親(父親も)マウスからは、肥満体の子供が誕生しましたが、栄養素を十分得た(食事管理された)グループの肥満体の母親(父親も)マウスからは、痩せた子供が誕生したという実験結果です。 ◆ストレス耐性は親から子へ継承される モデル生物である線虫を用いた実験で個体のストレス耐性「ホルミシス効果」がエピジェネティクス情報として子へ受け継がれることを示したものです。 これは、腸組織でのエピジェネティック変化が、生殖腺におけるエピジェネティック変化を誘導し、この組織間コミュニケーションによって個体のストレス耐性 が上昇するということです。さらにこの腸-生殖腺の組織間コミュニケーションを介して、ストレス耐性の上昇が子世代へ継承されることを明らかになってま す。 消化器官は、外界から摂取したさまざま物質が集まる場所であり、このような環境変化に晒される腸組織から生殖腺へと情報が伝達されることで、親と子の生存力を向上させるという、生物の生存戦略の一部として機能する可能性が考えられます。 生物は常に、ウイルス感染や飢餓、温度変化などさまざまな環境ストレスにさらされている。過度なストレスは生物に悪影響を与えるが、マイルドなストレスは ストレス耐性を誘導し、結果的に個体に有益となることが知られている。微量なストレスや有害物質が個体にとって有利な効果を示すことを、ホルミシス効果と いう。 |
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