バイオメンター動物病院
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行動心理学の話


私達のインスタグラムの動画は、 狼犬子犬のモナミが北斗に窘められている姿です。リードが絡まり北斗が動けないのが原因の様にも見えますが、ノーリードでも同じ状況が頻繁に起こります。 普段は、やり過ぎるモナミをブロックしますので、北斗が切れる事は稀ですが、今回は画像を残すのに介入しませんでした。北斗のメンタルキャパシティが無い ようにも見えますが、牙を見せても攻撃しない時が多いですから、今回の散歩中にカーミングシグナルを出し続けても無効果だったので、ここで堪忍袋の尾が切 れた様です。

唸るから、鼻にシワを寄せるから、牙を見せるからといって、犬は直ぐにアグレッシブな行為をする訳ではなく、「居心地悪い」と言う感情を現すボディーラン ゲージであるケースが多いです。しかし、時にはその居心地悪さに慣れてもらわなくてはいけない時もあります。特に私達の様な獣医診療所では、そういった場 面が多い訳ですが、紹介されたという事で、家族もお手上げ状態の攻撃性の高い犬達の来院も多く、犬の行動心理に関してそれなりの知識と経験が必要です。

今日は、一歳半になる日本犬の雄がアレルギー検査に来た時の話をします。飼い主さんは、初めて犬を家族に迎える方で、一歳時のワクチン接種で初来院した時 は「この子はこういう子だから自由にさせてます」と言いながらも、支えようとする飼い主さんに唸り、鼻にしわをよせ噛み付こうとする愛犬にかなり苦戦され てました。「自由にさせる」という飼い主さんの意向ですので、私はこういった場面では出しゃばらず、まずは人と犬の関係を観察します。しかしトリーツも拒 否し暴れる犬の姿に見るに見かねた主人が、私に交代する提案をしました。
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まずは、慣れない診察台から犬を降ろし、ノーリードでショップ内を自由に歩かせながら大きな生の牛肩甲骨を見せました。大きな骨に犬は直ぐに興味を示し、 ガウガウと骨に噛みつかせ引っ張り合いの遊びに誘いました。犬の意識が私と骨に十分集中したと感じた時に、獣医である主人に注射を打つことを促しワクチン 接種が完了しました。私達はワクチン接種の際に、犬達の自己免疫が注射時のストレスで低下しない様に生食を与えながら行います。殆どの子達がお肉に夢中で 注射には気が付きません。
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今回は血液採取という難度の高い行為です。犬の行動は前回と変わりませんでしたが、飼い主さんの姿勢が変化してました。初めて迎えた犬が、依頼した全ての ドックトレーナーから「ドミナントでアグレッシブで手に負えない」と見捨てられ、この半年、躾られない自分にかなり自信を失い、「自由にさせる」という思 いも、他犬や人とのトラブルで冷や汗かく場面を何度も経験し、これではいけないと実感していたそうです。
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指導を頼まれましたので、診察台に乗った犬が抵抗し威嚇した時の対処法をカウンセリングしました。犬の支え方、暴れ出した時の対応、唸っている声の聞き分 け方、また「今行っている行動をやめて欲しい」という意味を込めた「NO」を伝えるタイミングや言い方、さらに「私が居るから大丈夫」ということを信じて もらう方法や褒め方などを、飼い主さんご自身でハンドリングしてもらいながら説明しました。勿論犬にも、診察台に登る前に、今から私達が行うことを説明し ました。
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この飼い主さんは、自分の犬への恐怖心を抱えおり、とても緊張されましたが、私の観察からこの犬の攻撃行動は不安が原因であると診断をしましたので、「犬 を精神的に支える強さを持ち、頼れる存在であることを犬に見せて下さい」と伝えました。すると飼い主さんの恐怖心が徐々に薄れ始めたのか、心細かったNO という言葉に力強さが出始め、犬を支える態度も、オドオドしたものから毅然とした姿勢へと変化し、犬を見つめる目や褒め言葉には「大丈夫だよ」という思い を伝える愛情が溢れ出て来ました。
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犬の威嚇行為が微妙に弱まる瞬間も出始め、自分がどう対応すべきか葛藤している様子でした。犬のこの心理の変化をキャッチし、「その行為を見せて欲しい」 というシグナルを送るために、支えている力を抜いたり、言葉で「Good」と伝えることで、犬はこれが争いを避ける方向であり、人に頼ることで実際に怖い 事は起こらないことを学習します。
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ある瞬間、犬が飼い主に甘える様な態度をとり、腕の中に寄り添うように大人しくなった時、静かに血液採取が終了しました。自信ありげな威嚇行動とは裏腹の HELPという愛犬の心理に触れ、信頼関係を築く入り口を見つけたと言われた飼い主さんの笑顔が印象的でした。

犬の攻撃行動には様々な原因がありますが、恐怖心から来るケースが最も多いです。特に飼い主との信頼関係が築かれていないため、対処の仕方がわからず自己 防衛で攻撃性が出てきます。この飼い主さんは気弱な印象を与える方でしたし、犬との生活は生まれて初めてですので、恐怖心があってもそれが攻撃行動に発展 しない様な性格の犬で経験を積んだ方が良かったのかもしれませんが、出会いは運命です!この犬にとっても、この飼い主さんだったからこそ、アグレッシブな 躾を受けずに済みました。攻撃的な行為を見せる犬達は、間違った躾法を受けるリスクを抱えおり、安楽死にまで至るケースもあり、こういう犬達こそ、彼等の 心理を本当に理解するドッグビヘイビアリストに出会ってくれることを切に願ってます。

ホリスティック獣医療とは、医学的な視点から動物が抱える疾病をアプローチするだけではなく、こういった心理的な面での影響も含めた全ての視点から治療法 を見出すことが重要です。動物たちも人と同じように感情をもった生き物です。心理的な面での蟠りが身体的な症状として現れる可能性があることも人間と同じ だと言えます。


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成犬と子犬の会話



インスタ上にある動画の モナミが接しようとしている相手は、12歳になるメスのジャーマンシェパードのゼノです。変形性関節症で立ち上がれなくなり往診し、緊急のケースで使うビ タミンや薬品をミックスした注射を打ち、立って歩けるようになったのが初めでの出会いでした。その後も定期的に、この注射を打つことで自分で歩ける日々を 過ごせてます。二週間に一回の注射は、ゼノのストレスを考え、自宅で出来るように飼い主さんに打ち方を教えました。今回は散歩の帰りに今月分の注射を貰い に来た時の様子です。

若い頃はとてもドミナントな性格で、飼い主さんを守る姿勢が強く、礼儀のない他犬との争いも絶えなかったそうです。12歳になり思うように足が動かなく なっても、子犬のモナミへの態度は威厳のあるものですね。モナミもそんなゼノのボディーランゲージをしっかり受け止め、何とか関心を抱いて貰えるように非 常に用心深く服従姿勢を見せてます。尻尾をあそこまで後ろ脚の間に入れるのは、ゼノとの接触で初めて見せた行動でした。

怖いと思いながらも好奇心が旺盛なので、なんとか認めて貰うために近づこうと頑張ってますが、ゼノは飼い主さんを保護する姿勢が今だに強く、モナミが近づ くと口を閉じて目線を合わせ「あっちに行け」と警告してます。その一瞬のメッセージをモナミも理解し、慌てて低い姿勢を保ったまま距離を開けてますね。

ゼノの飼い主さんも、ゼノの護衛姿勢を考慮し、決してモナミを撫でたり触ったりせず、モナミから距離をあけるような感じで、診療所ないを常に移動されてま した。立ち止まるよりも、移動させながらお互いのボティーランゲージを出し合い、理解し合わせる方が、成犬にとっても子犬にとっても自然な会話が出来ると 思います。

ちょっと不安が強まり、私の足の間に入り込んだ場面もありますが、私もモナミを撫でたりはしませんが、「大丈夫」と伝えるエネルギーを発することで、過激 な恐怖心を抱かせないようにします。ゼノも私がモナミを守る立場にあることを理解してますので、何とか穏やかに、しかしハッキリと「あまり関わりたくな い」というメッセージを送ってました。

鼻を合わせる挨拶はさせて貰ったモナミですが、ゼノが飼い主から離れた瞬間に、もう少し関心を抱いて貰いたく、服従姿勢で近づきましたが、ゼノが口を閉じ て顔を背けたので、やっぱり無理そうだという思いが過ぎり逃げ出しました。その後は完全に距離を開け、遠くからゼノを見てるだけでした。

パピーライセンスという言葉をご存知かもしれませんが、これは、子犬であれば(認識のある)成犬から何をしても許してもらえる子犬免許期間を意味します。 しかしこれは認識のある成犬であっても、子犬が行き過ぎた行為を行うと、やはり雷が落ちますので、誰に対しても何をしても良いという意味ではないことを現 場にいる犬達が行動で教えてくれます。もし、子犬が成犬のボディーランゲジーを理解できず強引な行動を取っていたとしたら、成犬の堪忍袋の尾が切れる前 に、他犬のボディーランゲージを人が読み取り、自分の子犬を落ち着かせる指導をする必要があります。

古典的な子犬行動である「相手の口を舐める」という仕草も、成犬にとっては厄介な行為であることが多く、やり過ぎた場合に他犬から喝が入る事が多いようで す。現に、モナミと暮らし始めてもう3ヶ月経ちますが、先住犬で6歳の北斗は、今だにこの行為が好きではなく、アピールし過ぎるモナミを怒ります。

ゼノのような経験豊富な老犬と、初めて会話したモナミでしたが、先ずは子犬として相手の犬への尊敬を表し、好奇心旺盛ながらも従順で謙虚な態度を取れたこ とで良しとしたいと思います。これも、日頃、北斗に指導を受けているお陰だったのかもしれません。

さて、オランダでは、日本の皆さんが行われている様な、最後の最後まで老犬を介護するという考えが、残念ながら存在しません。自分の足で歩けなくなった殆 どの動物が安楽死を受けるのがオランダでの現実ですので、ゼノのような老犬にとって「自分で歩く」というこが、どれだけ大事かお分かりになるかと思いま す。

最後まで自分の足で歩けるように、特に大型の成犬への日頃の運動や食事へのアドバイスを行います。体が必要としている栄養素を提供するために、フード食を 与えていた場合には筋肉や骨、軟骨などを含めた生食に切り替えるアドバイスを出します。すでに生食をされている子で、変形性関節症の兆候がある場合は関節 サポート用のサプリを勧めます。関節を支える筋肉を強化することで防げる疾病は多いですので、足腰を使うことも予防策です。

だらだらと散歩をするのではなく、山道を時間をかけて一歩一歩、歩かせたり、直線コースでインターバルトレーニングを取り入れたり、ハーネスをつけて荷台 を引っ張っているような動きをシミュレーションし、重みを後ろから感じさせながらからユックリと前へ進むトレーニングなどは家庭でも行える事です。また足 腰に負担を掛けずに短時間で効果を発揮するハイドロセラピー(水泳療法)やウォーターウォーカー(水中歩行)なども予防対策としては抜群です。

食事で筋肉や骨を与えたり、高価なサプリを摂取させても、まず自分の足腰を鍛えない限り老化による後退は予防できませんので、食事療法と合わせ、運動は大 変重要です。子犬の頃から意識して積み重ね、6歳を過ぎたころから本気でトレーニングを行っても後々損はないと思います。老犬と言われる年齢から始めても まだ遅く




犬は人を理解する



2 歳になるジャーマンシェパードを去勢手術し、10日後また抜糸をしに来ました。飼い主さんの話では、麻酔しないと抜糸は無理だろうという話でした。診療所 に来て事情を聞いたら、前回、別の獣医で傷の手術をした後の抜糸の際に非常にパニック状態に陥り、6人のアシスタントさん達が押さえ込んでも暴れ、終いに は怒った獣医が犬に対し罵倒し始め、あまりにも酷い仕打ちに飼い主さんは抜糸をしないまま出て来たそうです。

すでに計画されていた去勢手術を私達にお願いされに来られた理由がこれで分かりましたが、さて問題の抜糸です。最初は絶対に無理だと言われる飼い主さんで したが、私たちは犬を無理強いさせ押さえつける様なやり方はせず、犬の理解力を信じて犬自身に協力してもらうやり方だというのを説明し「では一回だけ麻酔 なしでやってみてダメだったら麻酔しましょう。」ということで挑戦する事にしました。犬の前足を後ろから支え持ち上げてもらい、獣医の主人が床に跪いて抜 糸をし、私が犬に話しかけ抜糸を理解してもらうという役割分担をしました。

まず、抜糸を行う前に今から私達がやる事を言葉に出して犬に説明しました。飼い主さんにも足の持ち上げ方の要領をお話し挑戦しました。持ち上げられて私が 犬の目を見ながら褒め言葉を連発し、頭を撫でながらよく頑張っている事を伝え主人が床に跪き抜糸を始めました。1回目にし犬は意外に大人しく私の言う事に 集中してましたが、大きな犬ですので足を持ち上げている飼い主さんのバランスが崩れ暴れようとしたので、無理に抑え込まず直ぐに犬を解放するようアドバイ スし、一旦深呼吸で再度挑戦する事になりました。

今度は飼い主さんのバランスを考え壁で背中を支え後ずさりできない様にスタンバイし、もう一度犬に事情を説明し足を持ち上げて貰いました。主人が抜糸をす る間、犬が私の目に集中するよう話しかけます。犬の目をじっと見つめ頭や首をマッサージしながら言葉で褒め、これが終わったらお家に帰って餌が貰えるし、 散歩に連れていって貰える事を話し、実際にその光景を頭の中でイメージし犬に伝え、心の底の「大丈夫だから信じて任せて」という声が伝わる様に見つめまし た。

犬はジッと私を見つめ大人しそうな顔つきになり、そうしている間に主人が抜糸を終えました。私が飼い主さんと犬に「ほらね~できたでしょう』飼い主さん達 は大喜びで握手をしてました。

ハ ンデリングを行う人間が犬達に今から何をするのか丁寧に説明する事は大変重要な事です。人は犬達が理解しない動物だと決めつけているところがあり、犬への 尊重心が足りない時があるのではないかと思います。それが犬達とのコミュニーケーションが上手くいかない一つの原因だと思います。





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