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鹿や馬肉に含まれる鉄分で癌になる?


「過剰な鉄分摂取が癌を招くので、鉄分の多い馬・鹿肉の過剰摂取で鉄分の過剰摂取に繋がり癌になり易い」 とい う発言を耳にされた生食派の方々から「本当にそうなのか?」という質問がきました。

この発言の元となる参考文献が実際はどれなのか不明ですが、

1.鉄分の過剰摂取による癌発生率の上昇
2.体内の鉄分蓄積による癌発生率の上昇
3.赤身肉や加工肉を食べることによる癌発生率の上昇

に関する英文文献が発言の元になっているのではないかと予測し、それらを読んだ上での私達の意見です。

先ず結論から言うと、馬・鹿肉を生食している犬猫に向けられたこの発言を裏つける事実は参考文献から出てこな かったです。

1.鉄の過剰摂取により癌発生率の上昇

この文献内では「サプリメントによる鉄分摂取」の話をしており、その文献内でも明確に、

「蛋白に含まれる鉄(肉に含まれる自然な形の鉄分)とは関係ない」

と記載されており、犬達が食べている鹿肉や馬肉とは無関係であることが判明しました。

2.体内の鉄分蓄積による癌発生率の上昇

遺伝的に鉄代謝がうまくいかない鉄過剰症、ヘモクロマトーシスの人を対象にした研究であり、健康な人間さらには 犬や猫には無関係の内容です。

この遺伝子変異による鉄過剰症(遺伝性ヘモクロマトーシス)は白人、特に北欧にルーツを持つ人に多く、日本人に は非常に少ないという話です。

日本における鉄過剰症の主要な原因は外的要因が関係する二次性のもので輸血が殆どを占めているそうです。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」にも、通常の食事で過剰摂取が生じる可能性はないが 、サプリメント、鉄強化食品及び貧血治 療用の鉄製剤の不適切な利用に伴って過剰摂取が生じる可能性があると記載されています。

単に、肉による鉄分摂取の問題であれば、15歳以上の鉄の耐容上限量基準値は50 mg/日(男性)、40 mg/日(女性)であり、100grの鹿肉には3.1mg程しか鉄が含まれてない為、肉食動物で45kgの体重である狼犬モナミなら1日に1300gr〜 1600grもの鹿肉を食べても耐容上限量基準値を超えない計算になります。

海外の研究ではヘム鉄が大腸がんのリスクを上げることを示す結果が報告されていますが、関連性は認めらてないと いう研究結果も同時にあります。

3.赤身肉や加工肉の過剰摂取で癌発生率の上昇

加工肉やステーキやハンバーガーなどの赤身肉のバーベキュー/グリル製品の毎日の摂取量が多いほど、女性の結腸 直腸癌のリスクが高くなる事が判明とありますが、どの量をもって「摂取量が多い」と述べているのか明確でないで す。

また加工肉やステーキやハンバーガーなどの赤身のバーベキューやグリル製品を、犬達が生食している鹿肉や馬肉に 関連付けできないです。

欧米ではヘム鉄は主に(加熱された)赤身肉や加工肉から摂取されており、これらに含まれる硝酸塩や亜硝酸塩など の”がん誘発物質”によりリスク上昇があるのではないかとという論理もあります。

肉を高温調理する際に生成する発癌性物質である複素環式アミン(ヘテロサイクリックアミン)と多環式アミンも関 係しており、犬が生肉を食べるのとでは話が全く違います。

カナダのダルハウジー大学のブラッドリー・ジョンストン准教授ら14人の国際チームによる赤身肉と加工肉に関す る過去の論文のメタアナリシスによれば、赤身肉摂取と癌発生率には関連性はないと結論つけてます。

この調査では、赤身肉の少ない食事は心疾患のリスクにほとんど、あるいはまったく影響を与えない可能性があった ほか、赤身肉の摂取量を減らしたことによるがん死亡率の減少割合は非常に小さいこともわかったとのことです。

🔸その他の研究内容への反論

研究1
1,624の研究のメタアナリシス分析によると、乳房組織で鉄が測定されたグループでは、鉄濃度が高い乳がんの リスクが高いことが分かったとあるが、乳房組織で測定された鉄が、食品摂取から起こっているとは限らず、鉄製剤 の過剰摂取によるものである可能性が高い。

その他の生活様式の影響などもあり、食品摂取による鉄摂取過剰とは結びつけられない。

文献内にも「しかし頭皮の毛髪で鉄分を測定したグループでは、鉄分濃度と乳がんリスクとの間に関連性は見られな かった。」という結論もある。

National Library Medicineによると「鉄と乳がんとの関連」に関する研究結果でも明らかな関連性は認められてない。
 
研究2
ヘム鉄の摂取量が最も少ない人と比較した場合、ヘム鉄の摂取量が最も多い人では乳がんリスクが12%増加するこ とを発見とあるが、ヘム鉄の摂取源が明確でないため、鹿・馬肉の摂取と結びつけるのは無理がある。

文献内にも「 食事、補足、または総鉄摂取量と乳がんリスクとの間に有意な関連性を発見できなかった。」ともあった。

🔸その他
体内にある貯蔵鉄(フェリチン)が鉄の吸収を制御しているため食事から得る鉄が必要以上に吸収され難く、不足は あっても食事により過剰になることはまずあり得ない。

体内鉄が減少すると鉄の吸収率は高まるり、充足時では過剰な鉄は腸管上皮細胞内にフェリチンとして貯蔵さ れ、腸管上皮細胞の剥離に伴い消化管に排泄される。

「馬・鹿肉の過剰な摂取」を鉄分の過剰摂取に結びつける飛躍した発言だ。
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「馬・鹿肉の過剰摂取」から「鉄分過剰摂取」を発症するにはどれ位の赤身肉を1日食べなくてはいけないのか事実 を知らない様だ。
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通常の食事から鉄分過剰摂取になる事はない事実も知らない様な発言だ。

生食とは、タンパク質だけでなく脂肪や組織、骨や関節などがバランスよく配合されている事が重要だが、たとえ鹿 の赤身肉だけを毎日摂取したとしても癌になりやすくなるという研究は出ていない。

45kgの最汝美でさえ、1日に食べるタンパク質や脂肪、組織や骨関節が入った生食は600〜800gr程度 (それ以上食べない)なので、赤身肉だけ1600gr以上食べさせるなんて到底無理。

1日に9キロの肉骨を食べれるオオカミが鹿の多い地域で生息している場合、鹿ばかりを食べる事でオオカミも癌に なるのか?

補足だが、生食メニューの成分表のタンパク質量は15%前後であり、脂質も同じ割合で配合されてなくてはいけな いが、タンパク質のみに拘り脂肪分を忘れているメニューが多い。

鉄分摂取の耐容上限量とは、習慣的に摂取しても健康障害をもたらすリスクがないとみなされる摂取量のことで人間 の場合は以下になり、
3〜5 歳は 1.6 mg/kg 体重/日
6〜7歳は 1.4 mg/kg 体重/日
8〜9 歳は 1.2 mg/kg 体重/日
10〜11 歳は 1.0 mg/kg 体重/日
12〜14 歳は 0.8 mg/kg 体重/日
を用いて耐容上限量を算定する。



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