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早期避妊去勢の影響と対応策 小型犬の雌の絵菜は8ヶ月齢の時に初ヒートを迎え、大型犬の狼犬モナミは2歳半でした。 両者とも初ヒート以来、明らかに筋肉の発達が急速化したのがわかりました。 性ホルモンのエストロゲンやテストステロンは筋肉、関節や腱、靭帯などを強化していくのに重要な役割を果たして おり、それが目に見えて確認できたという感じです。 また性ホルモンの分泌で起こるのが、長骨と言われる四肢の長い骨の骨端軟骨(成長軟骨)閉鎖です。 この性ホルモンが分泌される時期こそが、長い骨の成長をストップさせる時期であることが自然な法則であるため、 こういう関係が出来上がっているんだと思います。 しかし最近言われ出した「早期避妊去勢手術(8~16週齢)」や、以前まで推薦されていた5〜6ヶ月齢での避妊 去勢手術を行うことで、長い骨の成長板の”閉鎖遅延”が起きます。 これは犬や猫達にとっては、あまり好ましくない現象だというのが私達の意見です。 8~16週齢という早期避妊去勢手術を推奨する理由は譲渡後の繁殖を防ぐ為だったという話があり、犬猫の過剰繁 殖により多くの命が無為に処分されていることが背景にある為この結論に至ったということですが、こういう理由で あれば推薦したい気持ちも実はよく理解します。 しかしこの理由は、パピーミルや野犬、犬の放し飼いなどで増え続ける犬の頭数問題を抱えている国や地域で推薦さ れることであり、 オランダや日本の一般家庭の様に、子犬を家族として引き取る場合を対象にしている訳ではないので、一般獣医が一 般家庭に「早期不妊去勢手術」をアドバイスすることには疑問を感じます。 随分昔にも書いた事ですが、早期避妊去勢手術のデメリットを再投稿します。 (1)早期避妊去勢手術で性ホルモン分泌がストップし、長骨骨端軟骨の閉鎖遅延が起こると、足の骨が必要以上に 伸びてしまうという現象が起こる。 その一方で、筋肉や関節、腱や靭帯などを強化する働きのある性ホルモン分泌が止まるため、それらの成長が足の骨 の長さについていけず、足腰の弱い犬に成長してしまうというケースがある。 その結果、骨が長い(体高がある)わりには筋力もなく骨折しやすくなったり、関節や腱、靭帯もそれをサポートす る筋肉の発達が欠け、怪我をしやすい身体に成長してしまう。 アメリカでの研究報告でも、早期避妊去勢手術による長骨骨端軟骨の閉鎖遅延で、不自然な体型になる可能性がある という研究結果がある。 (2)癌、リンパ腫、甲状腺機能低下症、肥満などになる確率が上がる。 (3)去勢や避妊手術と副腎機能低下の関連は以前記事でも紹介。私達も診療所で実際に臨床経験がある。 早い時期に性ホルモン分泌を失った身体が、必要である性ホルモン分泌を副腎に代行させることで起こりえる副腎機 能低下。` 疲れやすい、食欲や元気がない、鬱的、震え、不安症、分離症、攻撃性が増す、下痢、嘔吐、異常な睡眠時間、免疫 力がない、原因不明の皮膚病等の症状が現れ、原因不明と言われるケース。 甲状腺機能が正常であっても甲状腺機能低下症のような症状がみられる場合は副腎機能低下を疑う。 (4)精神的な成長への悪影響 (5)雌の場合、早期避妊手術で発症しやすい疾病のナンバーワンが「尿失禁」です。 尿失禁が原因で膀胱炎などにかかり易くなるりますが、膀胱炎への対処法に関しては別の記事を参照ください。 🔸既に早期避妊去勢手術を受けた子達のために、今後行える合併症防止対策をご紹介します。 尿失禁の原因には個体差がありますので、各ケースで原因治療を行う必要がありますが、以下は早期避妊去勢手術が 主な原因である場合の対処法です。
尿失禁に関しては、上記のケアを行なってもお頻繁に尿もれする場合はホルモン補充療法(エストロゲン)を行いま す。 私たちが使っているのはインクリンという錠剤で、投与量は1錠から始めます。その後は個体の状態 により適量を見つける事になります。 副作用が懸念されますが、私達の診療所でも数頭の雌達にインクリンを処方していますが、長期使用の子でも副作用 が見られたことは今までないです。 もちろん副作用を対策としていつも言っている、体にあう食事、過剰なワクチン&駆虫薬をなくす、ストレ ス関係を改善する事が重要ですので、そういった補助的なケアによって体の免疫バランスを保ちや排毒機能をサポー トできます。 |
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