バイオメンター動物病院
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ストレスと胃腸障害


多 頭飼いをされてるお家では、食べ物に関連する犬同士の会話(喧嘩?)を垣間見ることが多いかと思います。小型犬の絵菜が発する警告に、狼犬モナミは殆ど対 抗でき ません。警告の度合いによっては、モナミが無理に奪う行動に出で絵菜の警告が本格化し、争いが悪化する場合もありますので、必ず人間の監視下であることが 重要であり、両者共に攻撃性を抑える学習をさせる 必要があります。

食餌関連性攻撃行動起こす犬は多いようですが、家族の意見もオランダでは様々です。人や犬自身の安全性を考えこの行動を改善させる派と、犬にも権利があり 大事な餌には人も近づかない派に分かれます。最近は日本でも、犬を家族の一員として室内で過ごさせることが一般化し、人と動物が密度の濃い共生を行うよう になり、様々な問題行動が表面化してきてます。

日本における犬の年間(通報のみ)咬傷事故数は5000件程だと聞いておりますが、攻撃行動により放棄され る犬の数も多く、安楽死に至る犬達も存在します。また犬同士の争いであっても、お互いのストレス度が増し身体的にも悪影響を及ぼす可能性もありますので、 個人的な意見としては改善を試みるべきだと思います。

そのストレスでまず悪影響を受けやすいのが消化器官です。ストレスによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の機能にも異常をきたします。食欲不振、消 化不良、胃腸炎、下痢、便秘などの過敏性腸症候群を起こすのは人間でもよくある話ですが、動物達も同じです。またストレスにより神経伝達物質産生が低下 し、幸福ホルモンとも言われるセロトニン分泌にも影響を与えます。

セロトニンの90%は腸内で産生されますが、ストレスによって腸内の状態が悪くなればセ ロトニン産生も減少します。セロトニンは体のリズムを整えたり、ホルモンと同じような働きをしたり、睡眠の状態にも関係しており、体温の調整や痛みの認 知、消化・吸収、腸の蠕動亢進に至るまで、多くの体機能に関わっていますので、ストレスによるセロトニン産生低下は、更なる消化管機能低下を招き悪循環に 陥りやすいです。

腸で作られセロトニンはアミノ酸のように小さい物質ではないため血液脳関門というフィルターを通過できないので、精神的な面をコントロールする脳中のセロ トニンは脳内で産生される必要があります。

しかし腸内セロトニン濃度の情報が、腸と脳をつないでいる神経系に伝わり、脳の働きに影響を与えていることも分 かってますし、この関係性に腸内細菌も関わっており、腸中の腸内細菌の存在が、脳のセロトニン量に変化をもたらすことも研究で明らかになってます。腸内細 菌がストレス反応を抑えることや脳内の神経成長要因や神経伝達物質を送り込んでいることも明確のようですので、脳が受けたストレスの結果が腸の失調として 現れたり、腸で起きた生理的異変が脳機能に影響を与えたりといった「脳腸相関」が起こってくるわけです。

腸内細菌とセロトニン合成関係は、まだ研究段階で詳細は明らではないですが、子犬、子猫の時期からきちんと腸内細菌のケアをして、多様性を獲得することが 重要であるのは云うまでもありません。

またセロトニン濃度と攻撃性の関係は犬を含む多くの動物種の研究において知られていますので、腸と脳をつなぐ神経系 を刺激し、小腸でセロトニンの前駆物質であるトリプトファンを効率よく吸収し適切に脳内でセロトニン産生を行わせることで攻撃行動改善につながります。

そ れには腸内細菌の働きだけではなく食餌療法、消化器機能改善、腸内環境整備、ストレスのない生活、セロトニン分泌を促す太陽の光やグルーミング、適度な運 動等といったホリスティックな視点での改善を行いながら行動療法を受けることが効果的です。動物を家族に迎えた我々が、その動物の食生活様式を十分理解 し、彼らの行動学を学習することでが重要です。

高たんぱく食によるトリプトファン血液脳関門通過障害(他のアミノ酸が優先させる)に関し、脳内セロトニン合成への悪影響をよく聞きますが、これは人や ラットを使った研究結果であり、果たして肉食動物にも適用してよいのか?という大きな疑問があります。肉食動物を使った研究が全く無いのが現状です。

また 生食によって攻撃性が増すという話も、信頼性のない寓話だと経験上言えます。これまで何百頭という生食派の犬達を診てきましたが、この話を確定するケース は一つもないです。逆に行動問題が改善されたと云うケースの方が多いです。

敢えて云うなら、生食で身体的にも精神的にも改善が行われ心身ともに活気が増す ケースではないかと思います。その際に犬の行動学を把握していない家庭では問題行動の様に勘違いされることもあるのかもしれませんが、これは犬に問題があ るというよりも、人と犬や猫のコミュニケーションがスムーズに行ってないだけだと思いますので、行動心理学専門家に相談されるのも良いかもしれません。

日 本にもレベルの高い動物行動心理専門家がいますので。


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