バイオメンター動物病院
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涙やけ(流涙症)


「涙やけ」で悩んでおられる飼い主さん達が多いと聞きました。まずこの流涙症が目に関係する異変で起こってないか確かめる必要がありますが、眼検査では異 状は見られない場合の原因探しをしてみます。

まず、茶色くなる涙やけの犯人はポルフィリン(ポルフィリン鉄錯体)という色素だそうです。これが涙と一緒に 排出され太陽光線にあたることで反応し毛に色がつくそうです。このポルフィリンはヘモグロビン、ミオグロビン、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、薬物代謝酵 素のシトクロムP450 (肝臓の解毒作用の第一段階で活躍する大事な酵素)などの中に含まれる前駆物質です。

ヘモグロビンは血液内で酸素を運搬する機能がある赤血球の中に存在するタンパク質で、ヘムとグロビンから構成されてます。酸素分子を結合するヘム鉄は、 (プロト)ポルフィリンに鉄が配位した鉄錯体です。ミオグロビンは赤肉色の筋肉組織に存在する酸素貯蔵庫の色素タンパク質で、ヘモグロビンが運んできた酸 素をポルフィリン鉄錯体で受け取り、筋肉の中に運び貯蔵する役割があります。我々が犬や猫に与えている赤系のお肉もそうですね。

ヘムを構成する(プロト) ポルフィリンは、鉄を含んでいなくともそれ自身が「褐色」或いは「赤色」をしているそうです。そして、ヘムの様なポルフィリン・金属化合物においては、そ の色の源はポルフィリンの寄与が大きいという訳です。実は、ポルフィリンのマグネシウム錯体はクロロフィルで、色はご存知の通り緑色です。

ポルフィリン金 属錯体は中心の金属イオンの種類によって色が変わるので生体系のアートだとも言われてます。我々哺乳動物の命を支えるヘモグロビンと植物の命の源であるク ロロフィルが同じ様にポルフィリン骨格を持っていると言うのは、自然の中に生きる命として非常に一体感を感じる事実ですね。

120日の寿命を終えた老廃赤血球は特に脾臓、また肝臓等に存在するマイクロファージに貧食されヘモグロビンはヘムとグロビンに分解されます。グロビンは タンパク質合成に再利用され、ヘムも更にヘムオキシゲナーゼという酵素により鉄を含んだポルフィリン環開裂が行われ、鉄はヘモグロビン合成などに再利用さ れ、開裂されたポルフィリンはビリベルジン(緑色の色素)に還元されます。

ビリベルジンがさらに還元され(蓄積すると黄疸の原因となる)ビリルビン(黄色 の色素)となり肝臓へ送られ、肝臓で水溶性となり害の少ないビリルビンに還元され胆汁として胆管を通り腸に送られ、腸内細菌によってウロビリノーゲンとな り便で排泄されるか、腸管から再吸収されて体循環に入ったのち最終的に腎臓から排泄されるという流れになります。

ではなぜポルフィリン鉄錯体が涙液と一緒に排泄され「涙やけ」が発生するのか?その体内で何が一体起こっているのか?

実は科学的な研究は行われておらず、 想定しながら解決作を見出すしかないのが現状です。

遺伝的な眼球の作りで流涙症となる場合が多いですが、全員が涙やけになっているとは限りませんし、ドラ イフードを食する犬達にも多いという話もあります。

ドライフードの場合、食事でポルフィリン鉄錯体を摂取することはありませんので、涙腺から排泄される鉄 錯体は体内で出現したものであることが予測され、筋肉の破壊で起こるものもあれば、老廃赤血球から分離したものかもしれませんが、血中に増える鉄錯体の原 因は脾臓、肝臓、腎臓、骨髄などに存在するヘム分解酵素(ヘムオキシゲナーゼ)の不足であったり、ポルフィリン環を形成する長い過程で必要な、多くの酵素 や補酵素(特にビタミンB系)の不足で未完成のポルフィリン環が産生されたりしているのかもしれません。

この子達の食事を生食にすることで解決するケース が多い事実から、体内で発生するポルフィリン鉄錯体の代謝が、高品質タンパク質や補酵素の不足で上手くいっていないかったのかもしれないという感じです。

生食摂取の子たちにはこういった問題は少ないのですが、生食に切り替えても出てきてしまう子も存在するようです。生食に切り替えた子達の涙やけは、上記の 様に様々な代謝に必要な酵素産生や補酵素摂取がまだ十分でないことが原因かもしれませんが、摂取する赤筋(肉)に含まれるミオグロビン系のポルフィリン鉄 錯体も絡んでいるのではないかとも見ています。

現に、赤肉を白肉に切り替えて頂いたり、赤肉に少し火を通してもらうと涙やけが減少するケースもあるような ので、老化赤血球からのポルフィリン鉄錯体の分解に忙しく、お肉から得た鉄錯体を腸細胞内で分解する際に必要な酵素がまだ十分産生できてないのかもな~と いう気がしますし、ドライフード時代が長かった子でリーキーガット症候群的な症状から分解されていない鉄錯体が血中に漏れているのかもしれない感じもあり ます。

どちらにしても生食に向けて徐々に赤肉に慣らしていくことで、リーキーガット症候群であっても、酵素の不足であっても、最終的には赤生肉を摂取して も涙やけにならない体が出来上がってくるのではないかと思いますので、その子にあった生食の取り方やメニュー内容で試してみる必要があります。

涙やけの子には少し厄介な赤肉に含まれる赤色素のポルフィリン鉄錯体のように見えますが、大事な赤血球を形成するヘモグロビンの素材である、体内への吸収 率がかなり高い(特に肉食動物には重要な鉄補給源)ヘム鉄や、代謝に必要な酵素産生に必要な補酵素を多く含んでいる赤肉系ですので上手に使いって行きたい 大事な食材であると言えます。


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