バイオメンター動物病院
バイオメンター動物病院

バイオメンター動物病院



抗体検査とワクチネーションガイドラインの話


写 真にある北斗(当時7歳半)の抗体検査をしました。18週齢の時にスペインのシェルターから引き取った時は、既に二回(13週齢と17週齢)のコ アワクチン接種を行ってました。その後はワクチン接種を行ってませんので、今回初めて抗体を調べてみました。記事の中には世界小動物獣医師会 (WSAVA)が 提唱するワクチネーションガイドの情報も記載してます。

私達が使うワクチチェックは犬の血清、血漿又は全血中におけるジステンパーウイルス(CDV)、 犬アデノウイルス (CAV)及び犬パルボウイルス(CPV)に対する各IgG抗体の検出を目的とした血清学的検査(抗体検査)キットです。採血後30分程度で検査結果が出ます。日本でも扱う獣医がいるようです が、オランダではすでに数年前からこの検査結果が合法化され、ワクチチェックで出た陽性結果でペットホテルへの宿泊(オランダのドッグランは元々ワクチン の強制はなしです)や試合、展覧会への参加が許可されるようになり、抗体検査を受けに来るご家族が増え、ワクチチェックで子犬をスタートさせるブリーダー もかなり多くなりました。私達の診療所にも凡ゆる年齢の犬達が抗体検査にやってきますが、ワクチンの過剰接種の危険性を訴える私達としては嬉しい社会の好 変化です。

WSAVAが出す犬猫ワクチネーションガイドラインにも「成犬については、コア感染 症に対する血清学的検査(抗体検査)を実施して防御能を確認し、抗体を 持つ動物には再接種をしない選択をすることもでき、ワクチンは不必要に接種すべきではない。」とあり、「コアワクチンは、子犬および子猫の初年度接種が完 了し、6ヵ月または12ヵ月齢で追加接種(ブースター)を終えたら、3年毎よりも短い間隔で接種すべきではない。なぜなら、免疫持続期間は何年にもわた り、最長では終生持続することもあるためである。」とはっきり述べております。

また「ワクチン接種後のコアワクチン成分に対する抗体陽転の 確認、成犬の抗 体保有率の決定を目的とした簡易な院内検査の使用を支持する。」と述べてます。これはワクチチェックの話ですね。

また、
母 親由来の移行抗体が、幼少期の子犬や子猫に現在使用されている殆どのコアワクチンの効果を著しく阻害することを認識していると述べ、最後の回が16週齢、またはそれ以降となるように接種し、さらに文化的または経 済的理由のためにワクチンを1回しか接種することができない状況であれば16週齢また はそれ以降にコアワクチンを接種するよう促しております。

この移行抗体の話を考慮した場合に、6週齢や9週齢時にこの抗体を調べることで、初接種が必要な確実な時期を知ることができ、不必要な(早すぎる)ワクチ ン接種を回避できることになります。これが意識の高いオランダのブリーダーが抗体検査を取り入れる大きな理由であり、私達の臨床経験からも、抗体を所持 する母親の初乳を確実に飲んだ子犬の6週齢の時点では移行抗体を持った子が殆どだと言え、16週齢までその移行抗体レベルをキープしていた子犬も いました。

子犬の採血に抵抗がある方もいるかもしれませんが、検査に必要な全血は10μLというほんの一滴で十分ですので、同腹の子犬たちと一緒であることからも恐 怖を訴える子も少ないです。私達の診療所では何を行うにも、美味しい生食を提供しお肉に夢中になっている間に全てを済ませるようしてますので、チップ導入 や採血に全く気がつかない子もいます。6週齢での獣医の訪問は、健康診断、マイクロチップの導入、欧州では動物用の正式なパスポート所得も兼ねており、獣 医訪問を訓練する第一歩ですので、トラウマなどを抱えないよう、犬の心理を十分考慮して対応するようにしてます。

さて上記のブースターといわれるワクチン接種に関してもガイドラインでは、「主な目 的は、必ずしも免疫応答を「強化」することではなく、初年度のコアワク チン接種でいずれかのワクチンに応答しなかった可能性のある犬に、確実に防御的免疫応答を発現させることであり、ワクチンをブースター接種するよりも、検 査で(子犬または成犬の)抗体の状態を確認することが好ましいと考えられる」と述べてます。このことから、私達の診療所でも1歳以降の子達 にはまず抗体検 査を勧めており、例えば、初年度の幼少期に三回のワクチンを受けていた子達の殆どが抗体陽性であり、1歳時のブースターワクチン接種が必要でないケースが 大変 多いです。今回の北斗のケースが良い例ですし、同じ様に子犬期のコアワクチンのみで成犬になっても抗体を持ち続ける子の割合も診療所ではかなり高いです。

また、母親の移行抗体を所持している子犬にワクチン接種をさせた場合、そのワクチンが移行抗体により抹消されたり、移行抗体までも消えてしまうケースを経 験しました。ガイドラインによれば、16週目に最後のワクチンを接種させた後4週間以降に防御の有無を確認する為に抗体検査が有効になるとあり、その際に 出た血清反応陽性の子犬には26または52週齢でのブースターは不要であり、次のコアワクチン接種を3年後とすることができると書いてます。

WSAVAは動物に優しい獣医療の提供のため、ワクチネーションによる副作用の発生率軽減及び最適なプログラムの作成を目指して、様々なワクチネーション ガイドラインが提示されてきました。その目標を臨床の現場で達成するために抗体検査が欠かせない存在となっており、この重要性を認識したオランダ政府が、 ワクチチェックで得た検査結果を合法化し、過剰摂取による副作用発生率を抑える努力を行っており、意識の高い家族への抗体検査に関する知識がオランダでは 深まってます。


WSAVAのワクチネーションガイドライングループも
”「エビデンスに基づく獣医療」の原則は、「安全で低コスト」という理由で単純にワクチンを ブースター接種するよりも、検査で(子犬または成犬の)抗体の状態を確認することが好ましいと考えられる。” と記載してます。

ワクチン接種を考えておられる場合、副作用の多いワクチンの過剰接種を避けるために、ワクチンの必要性に関する正確な知識を持ちそれを正直に伝えられ、ワ クチネーションガイドラインを理解しそれを尊重し、さらに抗体検査の経験を持ってる獣医に相談されることをお勧めします。

関連する記事
>ワクチン の量への疑問
>家の三頭 の抗体検査実験と移行抗体の話
> 家の三頭 の抗体検査実験 結果発表

PDF:犬と猫のワクチネーションガイドライン - WSAVA


目次へ




ホ リスティック
獣医学情報

バイオメンター
ホリスティック動物病院
Broekhem 65
6301HE Valkenburg
The Netherlands (Holland)
Tel : +31-43-6011418
e-mail : japan@biomentor.org

オランダ獣医と

動物大家族