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家の三頭の抗体検査実験と移行抗体の話


以前7歳にった北斗の例をあげて抗体検査とワクチネーションガイドランのお話をしましたが、今回は逞、最汝美、絵菜に関するお話です。

オランダでも簡易に行える「ワクチチェック」による抗体検査要請数が年々増えており、家族に迎えた子犬が6週齢に抗体検査を受けていたので継続させて行き たいうケースが多いです。無闇にワクチン接種をさせるよりも先ずは抗体検査を行う事を勧めている私達としては、こういった意識の高いブリーダーやご家族の 増加は大変良い傾向です。猫のコアワクチン抗体検査もワクチチェックで行えます。

6~8週齢、12週齢、16週齢にコアワクチン接種を行うアドバイスが日本では多いようですが、”6~8週齢に初回のワクチンを!”となる理由には、初乳 による母子免疫(移行抗体)が関係しており、その移行抗体は生後2カ月未満から生後4カ月頃までにはその効果が消失すると予測されるため、用心のために 6~8週齢に初回を接種という訳です。また12週齢と16週齢ワクチンに関しても「1回の接種だけでは充分な抗体(抵抗力)が作れないため、1ヶ月毎に 2~3度追加接種を行う」という理由があります。しかし移行抗体が消滅する時期も、1回目のワクチン後の体内免疫反応も個体差がありますので、コアワクチ ンに関しては不必要で過剰気味のワクチン接種を避け、個体に適切な接種のタイミングを知るために抗体検査が役に立ちます。これは成犬の抗体保有の有無を確 認する場合にも適用され、抗体を持ってれば再接種は必要ないことが判ります。

さて我が家の犬達ですが、先ずはワクチン接種歴を紹介。
逞(3歳3ヶ月・8kg):接種なし。コアワクチンの3種の病原体に関しては一般家庭で育つ限り感染するリスクがゼロに近いことと、移行抗体の存在確率が 高いので接種なしをブリーダーに要請。

最汝美(2歳半・7kg):既にブリーダーで6歳齢にコアワクチンを接種、その後の接種はなし。

絵菜(2歳と1ヶ月・38kg):同じくブリーダーで6歳齢にパルボウイルスワクチンのみを接種、その後の接種はなし。

今回の抗体検査を行う切っ掛けは、既に2歳のチョコレートジャックラッセルの絵菜と3歳の逞のブリーディングを将来考えており、母となる絵菜の免疫状態を 知る為でした。絵菜は6週齢の時にパルボウイルスワクチンのみの接種ですので、未来の子犬達に移行抗体を与えられるようコアワクチン接種の必要性を検討中 だったからです。生まれたばかりの子犬にワクチンを打つことだけは避けたかったので、成犬である絵菜に抗体を所持して貰う方を選択しました。

しかし「小型犬でも超大型犬でも打たれるワクチンの量は同じである」という過去の投函にあるように、小型犬である逞や絵菜に正式な量(1ml)のワクチン を接種させることには、副作用を考慮した際にかなり抵抗がありましたので、コアワクチンを希釈したホメオパシーにあるノゾーズの様なものを作り接種させ獲 得免疫を調べてみる実験をおこないました。(注意:これは正式なワクチン接種ではないため、掛り付け獣医に要請することは困難であり接種証明などを受理す ることはできません。)。また、その当時、家から30kmの距離にあるドイツの国境付近でジステンパーウイルスに感染していた可能性のある狐の死骸が見つ かりニュースになった為、ワクチン接種を一度も接種していない逞や、6週齢の時に1度だけコアワクチンを接種している最汝美も、用心のため同時にノゾーズ 接種をさせることにしました。

本来なら最汝美と絵菜に関しては、希釈したものを打つ前に6週齢ワクチンの効果を調べた方が良かったのかもしれませんが、経験上、6週齢ワクチンのみでは 抗体が残り難いですので、ノゾーズ後に抗体検査をすることにしました。この抗体が出にくい理由に母乳免疫の存が関係してます。母犬の初乳から得た移行抗体 がまだ残っている状態で初回のワクチン接種を行っても、この移行抗体が生ワクチン内の病原体を消滅させますので無効化となりえます。またさらに折角貰った 母乳免疫が、初回のワクチン接種で破壊され抗体を失うケースもあります。私達の経験では、抗体をもった母犬の初乳をしっかり飲んでいた子犬に関しては6週 齢時の抗体検査が陽性であるケースが多く、16週齢まで持ち続けた子達もいました。

以前にも書きましたように、世界小動物獣医師会(WSAVA)が提唱するワクチネーションガイド内にも、母親由来の移行抗体が幼少期の子犬や子猫に現在使 用されている殆どのコアワクチンの効果を著しく阻害することを認識していると述べられており、最後のワクチン接種が16週齢またはそれ以降となるように接 種し、さらに文化的または経済的理由のためにワクチンを1回しか接種することができない状況であれば16週齢またはそれ以降にコアワクチンを接種すること を促してます。

三頭のテスト結果は次の記事『三頭の抗体検査結果』をご覧ください。


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PDF:犬と猫のワクチネーションガイドライン - WSAVA


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